ーファイナンス理論と投資分析ー
このウェブサイトでは、投資分析における重要な概念と用語を専門的かつ分かりやすく解説します。投資判断に役立つリスク・リターン分析からポートフォリオ理論まで、金融知識を深めるための情報を提供します。
投資用語集をダウンロード
リターンの種類と期待値の概念
リターンの基本分類
算術的リターンは単利運用のリターンを表し、ポートフォリオのリターンを単純平均するため短期投資の分析に適しています。
幾何平均リターンは複利運用のリターンを表し、中長期投資の分析に適しています。投資商品を選択する際には、両方のリターンを考慮することが重要です。
期待値と期待効用
期待値はある事象が起こるとき、その結果として得られる数値の平均値です。
期待効用は不確実な事象の起こる確率と得られるリターンを視覚化した数値で、各事象の確率×√各事象の結果+...nで表されます。
確実性等価はリスクのある投資の期待効用と同等の効用が期待できる、リスクのない投資から得られる価値です。期待効用の二乗=確実性等価
※効用関数が u(x)=√x(リスク回避型)のときに成り立つ関係です。
リスクの種類と投資家のリスク選好
1
システマティックリスク
市場全体の変動に相関するリスクです。分散投資による軽減は難しいとされています。
2
アンシステマティックリスク
市場の変動と相関のない企業固有(投資対象固有)のリスクです。分散投資により軽減可能です。
3
投資家のリスク選好
リスク回避的(凹)な投資家はリスクが高まるにつれ効用が逓減します(限界効用逓減の法則)。リスク愛好的(凸)な投資家はリスクが高まるにつれ効用が増加します。リスク中立的な投資家はリスクと効用は正比例します。
効用をU、富をWとすると、リスク愛好:U(W) = W^2、リスク回避:U(W)= √W、リスク中立:U
(W)= Wとなります。
標準偏差と正規分布
標準偏差とは、ある事象の結果のデータの散らばりの度合いを示す値です。まず平均値を求め、次に各結果と平均の差(偏差)を求め、偏差の二乗を平均し、分散を出します。最後に分散の平方根を取ると標準偏差を求めることができます。
例えばテストの点数が平均点より少し高かった場合、標準偏差が大きいと平均点を大きく上回る人がたくさんいるのでぬか喜びしてはいけません。標準偏差が小さいと平均点前後の人が大半を占めているので及第点と考えられます。
0
正規分布の期待値
正規分布の期待値はゼロ、標準偏差は1とされています。正規分布は左右対称なので、平均値を上回る確率と下回る確率は同じです。
1
標準偏差の基準値
投資分析では、1標準偏差内に約68%のデータが含まれると考えます。リスク測定の基本指標です。
平均ー分散アプローチと投資機会集合
平均ー分散アプローチの基本概念
投資家は、より期待リターンが高く、リスクが低い投資機会を選好します。これが平均ー分散アプローチの基本となる考え方です。
投資機会集合
投資機会が2種類の場合、接点Rの比率で投資をすることで分散ポートフォリオ効果は最大となります。
投資機会が多種に及ぶ場合、投資家は各々のリスク・リターンの目線に合わせてポートフォリオを決定します。
赤線:接点ポートフォリオ
トービンの分離定理
すべての投資家の将来の予測(期待リターン・リスク・共分散)が一致しているとすると、
接点ポートフォリオは全ての投資家で同一となり、
接点ポートフォリオ以外のリスク資産の組み合わせを選択する投資家はおらず、投資家は各々の効用に基づいて、
安全資産と接点ポートフォリオの組み合わせ比率を決めるだけ(最適ポートフォリオの選択)となります。
(接点ポートフォリオ上で各々が選択する)
資本市場理論と投資評価指標
資本市場線(CML)
合理的な投資家は安全資産と市場ポートフォリオの組み合わせによって資産を保有するため、ポートフォリオはこの線上に位置します。
証券市場線(SML)
証券毎のリスクリターンの集合体を表します。つまり市場ポートフォリオは証券市場線上に位置します。
ベータ値
ベータ値(β値)とは、市場平均に対する個別銘柄の感応度を示す指標で、指数に対して値動きが大きいか小さいか(ボラティリティ)という度合いを数値化したものです。
β値=(標準偏差×市場ポートフォリオのリターンの標準偏差×相関係数)÷市場ポートフォリオのリターンの標準偏差²と表されます。概念としてのβ値=リターン×相関係数/市場期待リターンです。
パフォーマンス評価指標
シャープレシオ
一つの投資対象のリスク(標準偏差)に対する超過リターン(安全資産のリターンを上回った超過収益)を測るものです。ERP(収益率-安全資産のリターン)÷標準偏差=シャープレシオと表されます。
トレーナーの測度
シャープレシオがリスク尺度にリターンのぶれの大きさ(標準偏差)を用いるのに対して、トレーナーの測度ではベータ(β)値を用いて超過リターンを測ります。ERP(収益率-安全資産のリターン)÷β値=トレーナーの測度です。
ジェンセンのアルファ
実現しているポートフォリオのリターンと期待リターンの差を用いて超過リターンを測ります。(期待リターンにはCAPMを用いることが多いです。)
CAPM(キャップエム)は資本資産価格モデルのことで、「リスクフリーレート+β値×マーケットリスクプレミアム」で投資家の期待利回り(期待リターン)を算出します。
金融派生商品とオプション取引
ロングストラドル(先物両建)
相場の上昇、下落ではなく、相場が大きく変動するかどうかを予想して行う戦略で、同じ行使価格のコールオプションとプットオプションを同じ数だけ買う戦略です。
プロクティブプット(現物買、先物買)
保有している原資産と同量のプットオプションを持つことで下落時の損失を限定し、上昇時はオプションを放棄する事で値上がり益を得られる戦略です。
カバードコール(現物買、先物売)
保有している原資産と同量のコールオプションを売ることで下落時の損失を限定し、価格の動きが少ない場合でも追加収益を狙える戦略です。
オプション取引の基本区分として、ヨーロピアンは満期日のみ権利行使が可能で、アメリカンは満期日までの間いつでも権利行使が可能です。コールオプションは資産の買い、プットオプションは資産の空売りを意味します。また、オプション買いは差金決済損益を得ることを目的とし、オプション売りはオプションプレミアムを得ることを目的とします。
オプション買い(ロング):差金決済損益を得る。(相場が大きく動くと予想)
オプション売り(ショート):オプションプレミアムを得る。(相場があまり動かないと予想)
→つまりコール買い・売り、プット買い・売りの4つのポジションが存在する。
MM理論
税金が存在せず、投資家は企業に対し共通の評価を持ち、完全市場であり負債にリスクが無い仮定した場合、
企業の価値は資本構成(デッド、エクイティ)に依存しないとする理論。
税金がある場合は負債利子分、課税利益が小さくなるので経営効率が高まり、レバレッジを効かせる事もできるので、
負債のリスクにもよりますが企業価値は資本構成に応じて価値が変化します。
投資家目線で言い換えると、負債が大きくなるほど経営効率が向上し、リスクが大きくなります。
金利に関する用語集
・スポットレート
現在時点と将来の一時点(回収時点)においてのみキャッシュ・フローが発生する場合に適用される金利で、
将来のキャッシュ・フローの現在価値をスポットレートで元本を割り戻して求める。
・短期プライムレート
短期プライムレートとは銀行の貸出基準金利の一つで預金金利に連動
・最終利回り
固定利付債の現在価値をキャッシュフロー発生時点に関わらず共通の割引率を使って算出し、
市場価格と等しくなるように求めた利回り。
Made with